BOKSADO備忘録

管理人(白井ミラノ)によるメモ書き置き場。

国技ムエタイの影響か、何かとA1タイプが多い印象を受けるタイ王国の名選手。

その中でもA2タイプとして君臨するのが、ウィラポンのようだ。

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アッパーを打つ時とか特にわかりやすいのだが、パラレルタイプは体幹のねじれが発生しにくいので、激しく動く中でも姿勢が固まっていることが多い。

比較にワンヘンを見てみよう。

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利き足の違いなども影響しているかもしれないが、なるほどワンヘンは体幹前面を主動面とするために、よりタイトな姿勢づくりとなっているようだ。
背中側へのゆとりはないものの、クラウチングの傾向が強く、よりファイター気質なボクシングが形成される理由といえるだろう。

 
ちょっと文章少なめで申し訳ない。
ウィラポンのアッパーと比較するための資料を探していたのだが、ワンヘン全然左アッパー打たないんですわ。外側からやや打ち下ろす形でのボディフックが多かった。 

B1の方から、「アルツール・アブラハムはB1と考えるにはありえない姿勢をとる」というご指摘を受けてから、ずっと気になっている。

A1タイプにはどんなボクサーがいるのだろうか?

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いるではないか、リトアニアに。

B2だと思っていたが、一発効かせた後のラッシュの掛け方は特徴的だ。
首元の手前あたりで棍棒を振り回す感じで、B2の筆者的が真似するとだいぶ窮屈になる。

そういえば、アブラハムもこんなふうに猛烈な左右の連打をかけていたなと思い立つ。

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ふーん、なるほどなぁ。

上体が直立していればBタイプ、なんて安直な分析はできないものだな。
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一応ハイガード時もチェック。
アブラハムは多分利き足右。それでこの姿勢から体が外へ流れないのだから、やっぱり4スタンス理論的軸は前足に来ていると考えるのが良いのかも。


というわけで、アブラハムはやっぱA1かもしれないです。
 

うーん…

ずーっとB2だと思って参考にしてたのになぁ。
でも研究すればするほどB2ができるパフォーマンスとの乖離が目立つようになる。

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B2タイプによるストレートでは、奥足から首付け根にかけてこれほど前のめりになることはない。

オルティスはサークリングを使えるファイターである。
また、オルティスの上半身の使い方は特徴的で、それを僕はクロスタイプのねじれと誤認していた。
これらは、おそらく利き足と利き目が 異なることによって引き起こされる。

 僕の見立てでは利き目右、利き足左だと思うのだが、どうだろうか。

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Aタイプが低い姿勢を取れるのは、両膝とみぞおちの3点でバランスを保つからである。

 それに加えてオルティスは、両肘を前に押し出し、左足を挟み込むように構える。
これを僕は今の所利き足前の選手による構えの特徴だと考えている。…合ってるかなぁ。 

ロマチェンコといえば全方位でマスタークラスのイメージが強いが、ことライト級に上げてからは顔面を腫らすようになった。

階級アップに伴うフィジカル不足という側面もあるにはあるのだろう。 
しかし、それだけで片付けてよいのだろうか。
ちょっとここに僕の思う、その原因とやらを書き留めておく。

 
【バックステップの多用】

 ロマチェンコといえば逃げ水のようなフットワークである。アマチュア時代から培ってきたヒットアンドアウェイの名残といえるだろう。
ボクシングは攻め続ける競技ではなく、様々なディフェンス技術を駆使していかに相手の攻撃を寸断し、リズムに乗らせないかが重要になる。
アマチュアルール、つまり3分3ラウンド(北京五輪では2分4ラウンド)という短い試合時間で常にイニシアチブを握るにあたっては、 絶えず足を使い続けるという戦略が功を奏しやすい傾向にあると思う。
東京五輪2020で代表例に上げるなら、対戦相手をことごとくRSCに追い込んだイマム・ハタエフを徹底したアウトボックスで完封し切ったベンジャミン・ウィテカーだ。
ああいったボクシングは、プロでは確実に足がつく。長丁場を闘う以上、あらゆるボクサーは省エネを意識せざるを得なくなるのだ。 

もちろんロマチェンコも、プロ転向後は左右の大きなフットワークを抑え、睨み合いの時間を増やすなどして、下手な消耗をしないよう心がけるようになった。

しかしそれでもなお、彼の踏み込みは時として直線的である。その原因となっているのが、バックステップではないだろうか。

直線的な動きを促進してしまうリスクがあるバックステップだが、2023年現在においてもその技術が廃れる気配はない。
適切に使うことで必要不可欠な技術へと昇華するわけだ。

では、ロマチェンコのそれは有効に機能しているだろうか?
サウスポーであることも影響してか、バックステップから攻撃を繰り出すことは少ない。どんなに仕切りに頭を振っていようが、距離があるうちは止まっているも同然である。
リーチが短いサウスポーというハンディキャップによるものと考えられなくもない。

【上体が起きている】

ロマチェンコといえば鮮やかなインサイドでの攻防だが、コテコテのファイターというわけではない。先述した通り、ロマチェンコはフットワーカーでもある。
足を使う選手は、その基本的な姿勢においてアップライトの傾向が強まる。足元が常に動作している、つまり不安定であるわけだから、上半身はスタビライザーの機能を務めなければならない。
故に、ロマチェンコの基本的な姿勢はアップライトなのである。

体格面で不利な階級に身を置きながら、試合のペースを掴むための武器は「近づいてコンビネーションをまとめる」というもの。パッキャオのようにカウンターを狙える質のものではない。
なので、正面を外しにくいアップライトスタイルがボクシングの根本であるというのは、それだけで被弾をいたずらに増やす要素なのである。



これらの問題点に対してロマチェンコは、レスリング技術と印象深い高速コンビネーションによって相殺を試みてきたと言えるだろう。

しかし、結果としてはプロキャリアにおいてここまで3敗を喫している。
サリド戦のように不本意な状況で苦杯をなめるという特殊ケースを含んでいるとはいえ、アマチュアで396勝1敗という圧倒的な成績を収めた名選手には、どうにも相応しくない結果である。

そこには確かに原因があるが、それについて他の選手を引き合いに出すのは忍びない。
こういうのはあまりにも千差万別であるし、時の運というものさえ絡んでくる。

しかしあくまで原因の一つとして、本記事の内容も一考に値するのではないかと思う。 

利き足には、体重をかけやすい。




これはオーソドックスのクロフォード。
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これはサウスポーのクロフォード。
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これだけで違いを感じた人、なかなかに身体的感覚が優れているかもしれない。
 
オーソドックスで構える時、奥足から首元まで一直線に伸び、左足はそれらを倒木を支えるように受け止める。

サウスポーで構える時、左足で少し踏ん張り、両拳は右足から胸元にかけて一直線になるように並べる。


クロフォードはスイッチができる類まれなボクサーだが、それでも彼の中にはドミナントとなる部位が存在していることを、これらの画像は端的に表しているといえるのではないだろうか。


…筆者はクロフォードについて、利き足左と考えている。 

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