boksado備忘録

『boksado』管理者、ミラノの物置です。

 こんにちは、ミラノです。

 アマチュアで飛び抜けた実績を残していなくとも、プロでその才能を本格的に開花させる選手はたまに現れます。
 代表的な例がクロフォードですが、今回はこれからを感じさせる元気いっぱいなハタチのボクサーを紹介します。




 以下、boxrec上の情報です。
🥊Omar Juarez(オマール・フアレス)
◆1999年6月16日生まれ
◆テキサス州ブラウンズビル出身
◆スーパーライト級
◆身長175cm、リーチ175cm
◆7戦全勝4KO

 上に載せた映像では豪快な倒しっぷりに目が行きがちでしょうが、躊躇ないフルスイング、アングルが変化しても変わらない精度の高さはたいへん魅力的です。

 ニックネームは'El Relampago'、『稲妻』です。以後お見知りおきを。

 こんにちは、ミラノです。早いものでもう12月中旬です。


 今年もボクシング界では様々なことが起こりました。

 良いこともあれば悪いことも、嬉しいこともあれば悲しいことも。

 特に今年は実力者として知れ渡っていたマキシム・ダダシェフとパトリック・デイが次々とリング禍によって命を落とし、日本のボクシング界隈でも馴染みのあったドゥワイト・リッチーがスパーリング中の負傷により息を引き取るなど、改めてこのコンタクトスポーツの危険性を思い知ることとなりました。

 今ボクシング界が直面している問題は山積みですが、中でも安全性については遥か昔から長きにわたって議論され、ルールも改定されていきました。

 幸いにも五体満足で現役として戦い続けるボクサーのこれからの安全を願い、今後も積極的な議論や試みが重ねられることが何よりの所望です。

 もちろんこれはボクシングに限った話ではなく、格闘技全般が常に向き合わねばならない問題です。練習、本番関係なく、いつでも格闘技は死と隣り合わせであることを、格闘技に励む全ての人が覚悟しなければなりません。
 そして対策を考え、自分の体との対話を日頃から繰り返し、周りの人は常に選手の体調を気にかけなければなりません。

 格闘技はチームスポーツです。

 改めて、格闘技で命を落とした全ての人々に、ご冥福をお祈り致します。




 話は変わります。

 4スタンス理論と出会ったことは、新たな視点の発見でした。

 ボクシングが100万倍面白くなるスパイスであり、ボクシングのことを考えすぎて寝不足気味になるほどです。

 そんな4スタンス理論の観点から、劇的なパフォーマンスの変化が明らかになった試合が今年はいくつかみられました。

 村田諒太vsロブ・ブラントⅡセルゲイ・コバレフvsカネロ・アルバレス岩佐亮佑vsマーロン・タパレス…とくにこの3つの、村田、カネロ、岩佐の3人による進化です。

 不可能を可能にした彼らの今後には、とりわけ注目しなければなりません。


 そして4スタンス理論上、数あるプロスペクトたちの中でも頭抜けた完成度を誇る選手がいます。

 ヴァージル・オルティス・ジュニアです。

 彼はB2タイプのボクサーなら誰もが注目しなければならない素晴らしい逸材です。

 ウェルター級ながらDAZNというのが惜しいですが、ここはひとつデラさんの力でライアン・ガルシアに劣らない人気・集客力を獲得してもらいたいものです。まだ21歳だし。


 今この場で、今後に期待したい選手はと言われると、多すぎて全員思い出すことすら困難です←

 これにつきましては大変活動的な僕のツイッターアカウントにて、たまに紹介するつもりです。




 階級制スポーツには、階級の壁というものがあります。

 実際にあります。

 でもそれが難なく乗り越えられてしまうトンデモな出来事も、たまに起こります。

 スポーツ業界においては様々な不正の問題がありますが、そればかりに目が行ってしまい、どこかで選手の活躍を見逃してしまっているかもしれません。

 僕は来年も、ボクシングにおける4スタンス理論の研究を続けます。

 選手を応援することとは別に、ボクシングを愛しています。

 今の僕にとっては、4スタンス理論で以ってボクシングを解き明かすことが使命であり、楽しみであるのです。



 なんという駄文でしょう。こんなのが今年最後の記事であっていいのでしょうか。

 でもあまり謙遜しているとひねくれ過ぎと言われそうなので、ここいらで景気の良い言葉で締めたいと思います。


来年も、僕の愛するライアン・ガルシア君を宜しくお願い致します!!!!

 こんにちは、ミラノです。

 僕のTwitterをフォローしていらっしゃる方などは耳にタコができるほど聞いた言葉であろう、『4スタンス理論』。
 しかし僕にとっても4スタンス理論は理解を深めるのが難しく、「だからなんなん?」というビッグな疑問符が頭の中に詰まったままの状態が結構長いこと続きました。

 正直ボクシングにおける4スタンス理論の全容を把握したわけではありませんが、少なくとも僕自身と同タイプであるB1タイプについてはある程度解明してきたつもりです。

 そこで今回は「ぼくのかんがえたさいきょうのびいわんぼくさあ」は如何にして完成するのか、トップ戦線で活躍する(した)B1タイプのボクサーを何人か取り上げ、この理論の世界から見た彼らのボクシングを説明していきたいと思います。

 え?なんか文字が消えてる?
 B1最強は永遠にマイク・タイソンだから考える必要ないんだよ(偏見

 また、ヤバいくらいの長文になってしまいましたので夜眠れない時などにお読みになると有意義な時間になるかと思います()


【①デオンテイ・ワイルダー】

 はい、まずは分かりやすいところから行ってみましょう。
 ワイルダーと言えばワンツー、特に右の一発。並み居る巨人を悉くなぎ倒してきたこの恐怖の一撃は、未だに誰も躱し切ることができていません。



 この動画には3つのKOシーンが収録されています(ブリージール戦はやや短いですが…)。

 とくに注目していただきたいのは、アルツール・スピルカ戦です。
 喧嘩四つで普段より距離が遠い状況の中、ワイルダーが左を差し出します。言わば右をコネクトするためのセンサーです。
 頭を振って近づくスピルカ、右に上体を流しながら踏み込んで左フックを浴びせようとしたところへ、ワイルダーは一気に腰を極めて内側から右をぶち込み、豪快なカウンターとなって決着がつきました。

 こちらのサイトの「その他タイプ別特性まとめ」のセクションを参照していただきたいのですが、B1の足の基点はかかとの内側になります。
 何が言いたいかというと、かかとの内側に体重が乗ることで初めてB1は最大限のパワーを発揮するのです。

 ワイルダーの場合は典型的なアップライトスタイルで、奥脚のかかとにキュッと体重を乗せるようにして小さくフットのポジションを調整するシーンが目立ちます。



 また、4スタンス理論の発案者である廣戸聡一氏はパラレル(A2/B1)タイプの身体の使い方について次のように述べています。

 パラレル(A2/B1)タイプの体幹は、脊椎そのものを中心にスピンするように動きます。そのため、身体をねじったりするさいには前後左右方向への動きが顕著になります。この特性と軸ポイントの組み合わせが影響しあって、パラレルタイプは、あたかも身体の前後の面で入れ替えたり、左右の面で入れ替えたりするような動きになります。

引用元:廣戸聡一(2014)『4スタンス理論バイブル』株式会社実業之日本社(p.239)

 ここで、スピルカ戦のワイルダーのノックアウトシーンを振り返ってみましょう。俯瞰視点の映像で確認してみると、確かに背骨を中心として両肩を入れ替えるようにパンチを振るっているのが分かります。

 もちろん、スタイバーン再戦やブリージール戦も同じ要領で痛烈なダウンを奪っているのです。

 ヘビー級を代表するKOアーティストがなぜこれほどまでにハードパンチャーとして活躍しているのか。それは、自分自身の正しい身体の使い方をよく把握しているからなのです。

 もちろんワイルダーは右ストレート以外でもお見事な身のこなしを発揮していますが、ここでは割愛させていただきます。

 ちなみにワイルダーのトレーナーを務めているマーク・ブリーランド氏も、現役時代はアップライトからの強烈な右が持ち味でした。興味ある方は是非YouTubeでMark Brelandと検索してみましょう。


【②ジョン・リエル・カシメロ】

 お次はこの選手。ご存じの通り、南アフリカのミステリアスであるゾラニ・テテをわずか3ラウンドで撃退したことで話題となった彼も、B1タイプのボクサーとして高い完成度を誇ります。



 こちらは山下賢哉戦になります。

 カシメロの構えはワイルダー以上に奥脚に体幹を傾けたゆとりのあるものですが、特に注目したいのは踏み込みからの右です。11分22秒あたりが分かりやすいかと思います。

 上体を一気に前脚側へ倒し、身体ごと叩きつけるかのようなスイング。

 先ほど載せたまとめサイトに、B1タイプの特性として「体幹の稼動は圧縮」と記されていますが、パラレルタイプの体幹には左右股関節から左右肩にかけて平行に軸が備えられています。
 B1タイプはこの2つの軸のどちらかを圧縮させることで、拳にパワーを伝えます。

 基点であるかかとの内側から勢いよく蹴り出し、カシメロは体幹の左側をギュッと圧縮させる感覚で右拳に力を伝えているのです。

 似たような要領の左ストレートをリゴさんも使いこなしていますね。もちろん彼もB1です。



 余談ですが、BTSportsが公式にアップしているテテvsカシメロの試合映像は2019年12月14日現在160万回以上再生されているそうです。
 近い将来ナオヤ・イノウエとの決戦が行われる可能性は高いですし、注目されているんですね。


【③ライアン・ガルシア】

 きたきたきた、来ましたよ僕の大好きなインスタフォロワー数438万(2019年12月14日現在)プロボクサーが。興奮で鼻血が出そうです(^q^)

 ここからは僕の愛するライアン・ガルシアがチームカネロに身を寄せてからどうしてこんなに強くなったのかを述べていきます。
 

 この映像は2018年3月に行われたフェルナンド・バルガス戦です。

 この時のライアン君は実に単純なボクシングでした。

 真っ直ぐ踏み込んでワンツーを伸ばし、ジャブを出しながら真っ直ぐ下がる。
 言ってしまえばこれだけで試合を組み立て、最後は軽く踏み込んでのワンツースリーを鮮やかに決めて失神KO。

 見事と言えば見事ですが、これ以外に引き出しがないことを後のジェイソン・ベレス戦、カルロス・モラレス戦で露呈したことは周知の事実です。



 ハイライトになりますが、直近のデュノ戦がこちら。

 プレスをかけるデュノに対して、ライアン君は背を丸めつつガードを固めて対峙します。

 この時、

奥脚のかかとの内側にしっかり力を入れてデュノのプレスを受け止め、
②右アッパーを外させてデュノのパワーを分散させたところへ上体を押し込み、
③逆に下がらせて左腕を伸ばすスペースを作り、
④差し込んだ腕をスッと抜いて右ショート→左フックを打ち込む
 という非常に多くの作業をこなしているのです。

 1年前の彼ならせいぜい左フックで誤魔化して覆い被さるようにクリンチするのが精一杯だったでしょう。

 また、せーので踏み込んでワンツーという読まれやすくその後の追撃のための姿勢もとりづらい攻撃ではなく、左に回りながら相手を常に一定の距離で捉えつつワンツーを放っています。
 これならもし躱されても懐に潜られる危険性も軽減され、何より広い視野で相手の位置を捉え続けることが可能です。

 そして頭を振り終えたデュノへ右ショート、左フック。

 改めて正対したところへ今度はいきなりの右、すかさず左上腕をデュノの左頬に差し込み、抜き取ると同時にもう一度右。

 次々と新しい攻撃パターンが繰り出される状況に戸惑うデュノ、気を取り直してもう一度距離を詰めようとしたところへ、

①ライアン君はその場でワンツー。
②スピードを意識せず力みなく精確に当てることでデュノの前進を寸断、
③最後は流れの中で放った得意の高速左フックをデュノが躱し切れず耳の裏に被弾、

 1ラウンドKOという結果に結びつきました。


 下手に踏み込んでバランスを崩したりせず、アップライトゆえに距離が遠く効果が薄い左リードブローはつっかえ棒にして相手のアクションを制限するために使い、左右の空間を活かして巧みに相手の動きをコントロールする。

 これらは全て常にかかと内側(特に奥脚)を意識することから始まっているのです。

 こんな単純なことですが、チームカネロで習得した細かい技術は全てこの意識なしには成り立ちません。

 B1はB1らしく奥脚に体重をかけてどっしり構える。そうすれば自ずと相手が動いてくれるので、それに対応し、出し抜くだけの技術があればやりたい放題にできるわけです。

 というか、2017年あたりのライアン君なんかはよっぽど良い動きしてたんですけどね。なんだか次の年はパフォーマンスが落ちていましたね。


 まだ肉体的変化が著しい20歳前後では調整の仕方も日を追うごとに変えていかなければならないのでしょう。難しい話です。


 ところで、チームカネロといえばカネロやレイ・マルティネスの検体からクレンブテロールが検出されるというスキャンダルを抱えています。

 実際にドーピングをしていたのかどうかについては毎度のことながらこの場で意見を言うつもりはないです。

 少なくとも、チームカネロに所属していればB1タイプの基礎を徹底的に鍛え上げることができる。

 俺はそう考えてる。


【まとめ】

 いかがでしたか?

 いかがもなにも意味わからんという人はその手に持っている缶ジュース、一体どういう持ち方をしているのか確かめてみてください。

 人差し指に力を入れて深くがっつりと握っていらっしゃるそこの貴方は、B1タイプの可能性が高い人です。

 サンドバッグを叩く、ミット打ちをするなどの機会があれば、是非かかとの内側を意識してフルスイングしてみましょう。拳の安全は保障できませんが、きっと普段より強く打ち込めるはずです。

 そして何より、B1タイプの代表として取り上げた3人のボクシングを真似てみることです。練習の様子を調べてみるのも良いでしょう。

 騙されたと思って、レッツトライ!

【試合内容】

 初回、フレーム差を活かして遠い距離からワンツーを打ち出し、形式的なイニシアティブを握ったマクレガー。ファルークはあまり手が出ず、踏み込むたびに飛んでくるリターンをさばくので精一杯。

 2回、上体を振りながら素早いステップイン/バックでジャブを打ち出し、距離が詰まったところで強振。下がると良くないとみたか、マクレガーは自ら前進して体格差を活かしたパワーボクシングで対抗。主導権を渡さなかった。ややクリンチの多い試合だが、高度な読み合いが展開されている。

 3回、依然として距離が遠いか。またボディワークは確かに優れているが完ぺきに躱しているとも言えず、守勢に回る時間が長いファルーク。ラウンド後半から距離が近くなるとようやく試合をリード。単発のダイナミックな攻撃は迫力があるが、マクレガーの押し相撲で寸断されがち。一方でマクレガーもゼロ距離からのボクシングの組み立てに乏しく、このままだとジリ貧か。

 4回、マクレガーの空振りが目立つ。巧みにボディショットを重ねてマクレガーを下がらせるファルークのラウンド。

 5回、ここでもファルークのボディショットが立て続けに決まる。下がり気味のマクレガーは手数こそ減っていないがやはり命中率が低い。顔面への被弾も少しずつ目立っている。

 6回、なんとかリングを広く使おうとしているマクレガーだが、ファルークを突き離せない。だがリング中央で組み合ってもファルークのボディショットを繰り返し被弾してしまう。時折強引にロープ際に詰める場面を作るが、ファルークは落ち着いてボディワークで捌く。

 7回、ファルークがインサイドへ潜り込んだところにアッパーで迎撃するマクレガー。おそらく陣営の指示だっただろうが、これも長続きせず、アングルチェンジであっさり対応されると真っ直ぐ下がらざるを得ない状況に。

 8回、ボディが効いてきたか、腕をだらんと下げてしまい顔面への被弾がかなり目立ったマクレガー。しかしファルークの強烈なレバーショットにも耐える根性もなかなかのものである。

 9回、マクレガーはとにかく下がっては迎撃して即クリンチを繰り返し、なんとかファルークをリズムに乗せまいと必死である。残り20秒当たりでマクレガーによる盛大なテイクダウンが発生。ファルークからも出血がみられた。

 10回、レフェリーの注意からスタートしたこのラウンド、ファルークの体力はなかなか落ちない。クリンチを無理やり引きはがしてさらに連打をまとめるなど、依然として攻勢を続けている。消極的なマクレガーに対しレフェリーがついにホールディングで減点1。すると一層苛烈な打ち合いが展開された。

 11回、マクレガーはできる限り下がらずに打ち合う。この期に及んでこのガスの吹かしようは驚くほかない。ファルークのカットもかなりの出血量だ。

 12回、非常にクリンチが多く膠着したラウンド。最後の2ラウンドはどちらについてもおかしくなかったが、全体的にはやはりファルークか。マクレガーは多くても取れたラウンドは5つだろう。また減点1も含めると2~3ポイント、僕的には5~7ポイントである。

 結果は114-113、113-114、115-112の2-1でリー・マクレガーが全勝をキープし、コモンウェルス及びBBBofC英国バンタム級統一タイトルを獲得した。


【試合数日前に発見したカード。両者の試合映像を観て好試合になると確信した】

 どうも、ミラノです。この僻地ブログにはそもそも需要がないので、皆さんが気にも留めないような試合を記事にすることがあります。今回はまさに「誰やそいつ?」という選手同士の試合についてです。

 先日グラスゴーで行われたMTK Grobal主催の興行のメインカードであったLee McGregor vs Ukashir Farooq。多分日本語表記するならリー・マクレガーvsウカシール・ファルークとなりますが、僕はこのカードを試合が行われる数日前に発見し、両者の過去の試合映像を観て間違いなく好試合になると予想しました。

 特にウカシール・ファルーク、こいつはこれから来るぞと一目で感じるほどの際立つセンスを感じたのです。

【ウカシール・ファルークというボクサー】

 ファルークはパキスタン出身ですが、現在はスコットランドのグラスゴーを拠点に活動しているプロボクサーです。

 キレッキレのボディワークで相手のパンチを悉く躱すさまからついたあだ名が'Untouchable'(アンタッチャブル)。boxrec上では165cmとバンタム級では標準的な体格ですが、その巧みなディフェンスから瞬く間に相手の懐へ飛び込み、強烈な左右フックで相手をねじ伏せるパワーファイターでもあります。

 とりわけボディショットの威力が凄まじく、戦績からはここ数年になって一気にパワーアップしてきたという成長ぶりが見て取れます。


【リー・マクレガーも良い選手だったが、インサイドでは終始上回られていた】

 対するリー・マクレガーも、長身且つ長いリーチを持て余さず、よくまとまったボクシングを展開できる選手です。

 強靭な脚力でプレッシャーをかけながらのカウンターボクシングも、中間距離以内での打ち合いでも強靭な脚力を活かしてコンパクトにフックを振り抜くこともできる選手です。どことなく同郷のジョシュ・テイラーと似通うところがありますね。


 しかし、ファルーク戦では思うように持ち味を活かしきれません。いかんせんファルークのディフェンスを前にリズムに乗れず、真っ直ぐ下がってはボディを何度も被弾してしまいます。

 相対的に腰高な選手がインファイトで対応するにはいつも以上に低い姿勢を作らなければならず、そこがジョシュ・テイラーとの差であるように感じます。

 試合はスプリットの判定でマクレガーによる薄氷の勝利となりましたが、今回の試合はお互いが今後当分負けることのない逸材であることを証明したと思います。

 マクレガーもテイラーばりにインファイトができるようになれば、間違いなく世界タイトルを獲得できる選手です。何せ耐久力がバンタム級のそれじゃない。

 そして彼以上に、僕はファルークに期待しているのです。今回は判定に泣かされましたが、完ぺきなウェイトの乗せ方を確立しているあの左右ボディフックに耐えられる選手はそうそういないでしょうし、ディフェンス能力の高さというもう一つの勝利のカギを握っているファルークなら間違いなく世界を獲れます。

【ブリティッシュ・ボクシングから見習うべきもの】

 ここからは半分ネタです。

 僕は一部の選手が展開するブリティッシュ・ボクシングが大好きです。インサイドにおけるプッシュダウンやホールディングさえ使いこなす戦いぶり、観衆も一体となって展開される心理戦。「それはボクシングなのか?」というところまで勝負に持ち込んでくる、勝ちに対する凄まじい意地汚さがたまりません。

 それは気合や根性に上乗せされた狡猾さです。彼らは常に沸騰するほどの興奮の中、よく頭を使って戦っているのです。

 ジョシュ・テイラーがレジス・プログレイスに勝てたのはなぜでしょう?

 ジョシュ・ウォーリントンがセルビー、フランプトン、ガラハッドと次々強豪を下したのはなぜでしょう?

 相手の良さを打ち消し、その中で最大限自分の見せ場を作る努力とは、試合ごとに論理的なチューンアップを行うことなのです。

 彼らにとって手段を選ばないというのは、付け焼刃の小技を並べて立ち向かうという意味ではありません。勝つために使えるものをかき集めた上で、それら全てを全力で鍛え上げ、磨き上げることなのです。

 そして何より、観客が圧倒的な熱量を持ち込むことなのです。


 ホームアドバンテージに関しては、うん、その。僕からはノーコメントです()

 こんにちは、ミラノです。

 先日行われた井上拓真vsノルディン・ウーバーリ。拓真は持ち味をいくつかの場面で見せたものの、全体的にペースを握ることができず、逆にウーバーリからダウンを奪われ判定0-3で敗れてしまいました。

 Twitterでの皆さんのご感想を伺う限り、「こんなもんじゃない」「化ける可能性があることを見せた」という意見も少なからず見受けられ、僕も同じような気持ちであります。

 しかし、プロで13戦をこなして今回の大舞台を迎えても尚、その灯火は大火へとなかなか変貌を遂げられていません。特に戦績からも見て取れる決定力のなさからは、「拓真にはパンチ力がない」という評価が現れても仕方がないでしょう。

 しかしです。これまで拓真が収めた3つのKO勝利は、相手陣営のギブアップではなく、全て彼の拳による決着であることを忘れてはいけません。何か特定の条件がそろった時、彼は恐るべき攻撃力を発揮するのです。

 今回はその根拠をウーバーリ戦の分析及び4スタンス理論を用いて説明していきたいと思います。如何せんろくに運動したこともない素人の意見ですが、面白半分に斜め読みしていただけるだけでも幸いです。

 以下、映像を観てリアルタイムで書き殴った試合展開の記録です。

【拓真vsウーバーリ】

初回、拓真のジャブが良い。ウーバーリは踏み込んでの左で距離感を図る。左回りの立ち上がり。

2回、拓真は下がりながらの右のリターンでポイントアウトを図るが、ウーバーリは脅威と感じていないよう。積極的に左を伸ばして理詰めを遂行する。お互い左回りで、奥側の拳を打ちたい。ウーバーリは右ボディを混ぜながら拓真にまっすぐ下がらせてパンチをまとめる。

3回、拓真はまっすぐ下がらされている。出入りに合わせた右アッパーや左フックで簡単に踏み込ませないよう工夫するが、イニシアティブを握れているとはいえない。左ボディから右フックのコンビネーションをそして低い姿勢からの左を被弾した。

4回、ウーバーリは右足のポジションもわずかに外側を常にキープしている。右のタイミングを読まれた拓真、ウーバーリの鮮やかな左でダウン。ややフラッシュだったか。

ここでスコアカード発表、本人はリードされていることに動揺したとコメントしているが、そう思っても仕方がないかもしれないと感じた。

5回、コーナーに下がったところで左ボディが一発決まる。少しおとなしくなったウーバーリ、しかし拓真は積極的に出られない。重心が高く、前に出る力がない。下がってロープ際にもたれることでバランスが崩れるのを防ぐことができるのである程度体重を乗せてパンチを打ち込めていたが。

6回、距離が遠いため拓真のパンチが当たらない。よくディフェンスをしているものの、それはウーバーリも同じ。膠着したラウンド。

7回、ウーバーリはコンビネーションや左ボディストレートで巧みに拓真を下がらせる。右を出す機会をうかがっているが、逆にウーバーリに踏み込まれる展開が続く。

8回、ロープ際から脱出してパンチをまとめる機会があったが、バックギアを意識しすぎたか、好打することはできず。相変わらずリング中央では腰が高く、前に誰らない。ロープ際に詰まる寸前での被弾が目立つ。一発だけ姿勢の整った左フックがみられた。

9回、左ボディを何度か好打。ウーバーリが下がりだすと、少しだけ攻勢を強めた。

10回、右の姿勢がやや改善されたが、依然として前のめりになりがちなのでそこから攻撃をまとめられない。

11回、なかなか積極的にパンチを出せない、まとめられない。歯がゆい展開が続く。ボディの攻撃が少ないのは、ウーバーリのガードが下がっているゆえか。

12回、打ち合いの中で左フックがクリーンヒット、頷きながら下がるウーバーリを追いかけるが、捕まえきれず。打ち返してきたウーバーリもさすが。

試合終了。僕的には117-110ウーバーリあたりが妥当かと。


【拓真が4スタンス理論でいうB1タイプであるといえる理由】

 早速4スタンス理論を使わせていただきますが、B1タイプで強力なストレートを持つ実力者は過去にも現在にも何名かいらっしゃいます。

 その中でも格別の破壊力を誇るのが、デオンテイ・ワイルダー、アドニス・スティーブンソン、ギレルモ・リゴンドウ、そして山中慎介です。

 彼らはリーチが長いので、半身に構えてリードブローを伸ばすだけで距離を作ることができます。そして鋭い踏み込みからのストレート、或いは相手に踏み込ませてのカウンターをぶち当て、KOの山を築いてきたわけです。

 しかし拓真の身体は胴が長くリーチが短いという、どちらかといえばファイタースタイルに傾倒すべき特徴を持っています。彼らと違って拓真は距離を潰すファイターでなければなりません。


 ここで今回のウーバーリ戦における構えと戦術を検証してみましょう。

 踵をつけ、上体を左斜め前に傾けるのが彼の基本的な構えです。そして、ジャブで距離を取りつつ遠い距離で右ストレートを点火、踏み込まれたらスパッと右ストレートを下がりながら伸ばすのが彼の基本的な戦術です。ついでに彼は右を振るのが好みなのか、相手が出てくるのを待ってジャブが出なくなり、真っ直ぐ下がってしまう悪癖があります。

 いかがでしょう。これだけで拓真には構え・戦術共に向いていないことがわかりますでしょうか。

 リーチの短い選手がワイルダーのように距離を取って戦うこと自体がそもそも無理があるというのに、奥側にある拳でぶちのめしたいがために頑張ってストレートを伸ばしたところで、現状の頭が前に出る構えではB1タイプ的に重心が前へ傾き過ぎてしまい、バランスをキープすることができないゆえ強く振り抜けませんし、そこからの追撃も困難なわけです。

 しかし、拓真はウーバーリ戦でもその隠されたパンチ力を確かに発揮しています。最終回に決めた左フックのカウンターは腰を落として右足を強く後ろへ蹴り出しながら両肩を入れ替えるように打ち出し、見事ウーバーリにたたらを踏ませました。

 また、過去に拓真がダウンを奪った試合のうち、フローイラン・サルダール戦は大いに参考になることでしょう。8ラウンドにアッパーを見せて体を起こさせつつ、自らは左にポジションをとって頭より右側へ振るった右ストレートでダウンを奪いましたが、上体を倒さず打ち抜いた直後に右脚が前に出た点も含め、B1タイプの特性がよく表れていたと思います。内山さんの右とソックリです。距離の作り方、ポジションの取り方次第ではリーチの短い選手もストレートで倒すことはできるのです。


【KODLABへ行くか、行かないか】

 確かに拓真には相手を効かせられるパンチを持っているのです。というか、僕個人の意見では倒せるパンチを打つことができない選手など一人もいません。パンチが弱いから当て逃げに徹するというのは、正直僕は感心しないのです。それは4スタンス理論に沿ったボクシングができていないだけだと言い張りたいです←

 先ほども書きましたが、拓真にはリーチがありません。それだけでなく、ナオヤ・イノウエのフィードバックタイプとしてファイトスタイルが強制されている影響か、その無理がある戦い方を敢行しているために肩に力が入り、パンチの伸びの悪さに拍車をかけているのです。

 内山高志という我らが誇るB1タイプの日本人ボクサーの代表がジムを開設したことで、その才能を開花させている選手は既に何人もいます。もう14戦こなして、兄貴には遠く及ばない迫力の戦いばかり重ねているのですから、そろそろ出向いてもいいはずです。今こそノックアウト・ダイナマイトに教えを乞う時なのです。

 どうせこんな記事は井上陣営の目に留まることもないでしょうが…笑

 ちなみに現在活躍しているボクサーで参考にするべきは、おそらくアルツール・ベテルビエフになります。比嘉くんも良いかもしれないけど、これまた少し体型が違うかな。


 とりあえず最低限やるべきなのは、現状の構えよりも軸を後ろに倒し、奥脚にしっかり体重を乗せ、その強靭な脚力で以って押し返しつつ、上体をダイナミックに振るイメージでパンチを放つということです。

 タッサーナ・サラパット戦の序盤なんかはそういう意味ではとても良かったんですけどね。あの試合もなぜか自然と兄貴のようなつま先に力が寄ったバランスの崩れやすい構えになっていってしまいました。

 とりあえず、モンスターの弟からモンスター2号へ進化する準備はすでに整っています。あれほど太い体幹を持つ選手が、こんなところで頭打ちになるわけがありません。

 同じB1タイプである筆者としても、今後に期待したいですね。

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