BOKSADO備忘録

管理人(白井ミラノ)によるメモ書き置き場。

カテゴリ:ボクシングの4スタンス理論考察(旧記事) > B2タイプ【4スタンス理論】

どうも、ミラノです。


結構長い間、ライアン君はB1だと言い続けてきた僕ですが、最近になってB2ではないかと思うようになりました。

それに関連して、B1とB2を比較して表れる違いの内、結構顕著ではないかと思ったものを紹介します。

左ボディです。
比較対象はライアン君とロベルト・デュランです。どちらも多分利き足は右です。

RyanGarciaLeftHooktotheBody1

RobertoDuranLeftHooktotheBody1

何が言いたいかというと、両肩の延長線上の前後どちらでインパクトさせているかが異なるのです。

ライアン君の場合は背中側、デュランはお腹側で炸裂しています。

別のシーンも見てみましょう。

RyanGarciaLeftHooktotheBody2

RobertoDuranLeftHooktotheBody2

やっぱりライアン君は背中側、デュランはお腹側で拳が命中しています。

なぜこのような違いが表れるのか?

あくまでライアン君がB2利き足右、デュランがB1利き足右であることが正しいとしたうえでの推論ですが、次のように考えています。


B2の主動面は胸側です。そしてライアン君の左ボディは次のようなメカニズムで体を動かしています。

・左肩-右股関節間で体幹が背中側へ開いた状態から、元に戻すように収縮させる時のエネルギーを利用する
・腕を胸側の筋肉で引っ張り込むように振る
RyanGarciaLeftHooktotheBody3


これに対し、B1の主動面は背中側です。デュランによる左ボディのメカニズムは次の通りです。

・左肩-右股関節間で体幹を収縮させる
・腕を背中側の筋肉で押し込むように振る
RobertoDuranLeftHooktotheBody3



また、ライアン君の左ボディがはたくようなスイングになるのに対し、デュランは放り込むような軌道を描きます。B2の腕の初期動作が外回転であるのに対し、B1は内回転であることが関係していると思われます。


どうですかね…結構はっきりとした違いじゃないかと思い、またライアン君がB2たる根拠として有力かと思い、取り上げてみました。

他にも「これだ!」と思ったやつはピックアップしてみようかな。

こんにちは。ミラノです。

既に生ける伝説と化したGGGですが、彼の全盛期は本当に誰が勝てるんだと感嘆の声が上がるものでした(要出典)。

そんな彼のボクシングを引き継げそうな選手を見つけたので、紹介しましょう。


🥊キャンベル・ハットン

コアな方なら大いなる疑問符を頭に浮かべたことでしょう。ライトな方なら誰だそいつと思ったことでしょう。

彼こそはかつてのイギリスのスーパースター、リッキー・ハットンの息子。

ぶっちゃけデビュー当初はいろいろ問題ありで、この先親父のようにトップ戦線へ駆け上がるとは思えない出来でした。

しかし、先日のビボルvsラミレスのアンダーでは素晴らしいパフォーマンスを披露しました。


なぜ彼がGGGのファイトスタイルを引き継げるのか。今回はそれを4スタンス理論含め独自にプレゼンする回です。

HattonStance


GGGstance

ハットン、GGG共に4スタンス理論上はB2タイプに該当します。基本姿勢においては右足底、右股関節、首付け根前面を軸ポイントとし、これらを一直線上に揃えます。

ジャブを見てみましょう。

HattonJab1

左足に体重を落とし込みつつ、右肩を背中側へ引っ張り上げることで疑似的に右股関節-左肩間で体幹を圧縮します。

ただ、これについてはGGG(全盛期)の場合、

GGGJab1

より勢いよく右肩を引っ張り上げ、上半身からの出力を活かしてジャブを伸ばします。同じように左足へ体重が落とし込まれるのですが、ほとんど宙に浮いた状態となっていることからも、改めてGGGの体幹の高い能力には驚かされますね。

別の角度から見てみましょう。


HattonJab2


GGGJab2

ここでもGGGはハットンと比較してより深く左肩を押し込んでジャブを打ち出しているのが分かります。
ただ、全体的な姿勢としてはほぼ同じですよね。肘はBタイプにおける可動ポイントということもあり、積極的に動かすことによって全身の連動を補助します。

また、ここでも左足を水色の円で囲っていますが、察しの良い方ならもうおわかりでしょう。
GGGとハットンはどちらも左足が利き足です。


これは多少僕の独自見解を含みますが、ボクシングは4スタンス理論だけでなく利き足によってもアクションに影響を及ぼすようです。
同じオーソドックスでも利き足が異なることによって、パンチのベクトルやディフェンスの傾向などが変化するといった具合です。


HattonRight


GGGRight

右を見てみると、二人ともしっかり左股関節-右肩間で体幹を圧縮させているのが分かります。
また、Bタイプなので回転扉の如く上体の芯を回すことで全身運動を実現させています。

利き足に関連することですが、研究していて一つ気づいたことがあります。
あらゆる人間には4スタンス理論に関連してある種のパワーラインがあるということです。

GGGとハットンであれば、それは左足-左股関節-右肩間で成立しています。
重心は基本的に利き足に偏るので、動作の根っこは左足にある。そして、体幹の動作は左股関節-右肩の圧縮を基準とする。
分かりにくい説明で申し訳ないですが、次の左ボディで何が言いたいのか頑張って解説します。

HattonBody

ここでのハットンの左ボディは右足底、右股関節、首付け根前面で軸を形成し、右肘と左膝を積極的に動かすことで体幹を回転させています。
注目してほしいのが、利き足はつま先、反対に軸足はかかとを活用しているという点です。
正直理由はよく分からないですが、利き足はつま先、軸足はかかとを地面につけることでそれぞれの役割を果たしやすくなるようです。こういうのも勉強したら理由が分かるのかな…?

一方で、こんな打ち方もあるようです。

GGGBody

人によってはもう何回見たか分からないであろうマックリン戦のKOパンチとなったGGGのレバーブロー。
ここでは右足がキャンバスから離れてしまっていますが、その代わりに左足底、左股関節、右肩を揃えることで軸を作り、右肩を背中側に引っ張ることで体幹の回転を実現させています。

この軸、先ほど紹介した「パワーライン」と全く同じやつなんですよね。
ハットンの左ボディは(一見分かりづらいですが)4スタンス理論的には右股関節-左肩間で体幹を圧縮することによって力を伝えています。
これに対しGGGは、右肩を背中側へ引っ張ることで、疑似的に右股関節-左肩間での体幹圧縮を実現させているようなのです。
これが出来るのも、4スタンス理論上の軸と「パワーライン」が一致しているからではないかと、僕は考えています。


なんか書いてたらGGGとハットンの相違点みたいになってしまいました。
繰り返しになりますが、GGGとハットンはB2タイプ、利き足が左であるという2つの点で共通しています。
あと体型も少し似ているかな?

ハットンはまだまだこれからの選手なので、GGGのようになれるという期待は重すぎるかもしれませんが、それでも先日の良いパフォーマンスを見ると、ワクワクせずにはいられないんですよね。
「B2利き足左オーソドックスマスター」といえるGGGを目指せる条件を満たす。そして、今まさに急成長中。いや、そりゃワクワクしますって。

検証していて改めてGGGってエグいボクサーだなと思わされましたが、もう新しい世代はすぐそこまで来ている。
ハットンには今のアグレッシブな戦い方を更に高めて、いずれカザフの雷鳴に匹敵する「ハリケーン」となってほしいものです。

僕はキャンベル・ハットンを全力で推しますよ、えぇ。


それでは!

【参考動画】
ハットン(ビボルvsラミレス前座)

GGGvsマックリン

GGGvsロサド

 こんにちは、ミラノです。

 村田さんは「アマにもプロに負けないところはある」と言って憚らない。
 僕は大いに賛同します。特に今年の東京五輪ボクシング競技はマジで面白かった。「素人のボクシング」とは一体何なのか、考えさせられてしまいます←

 さて、今回は遥か昔、そんなアマチュアボクシングで、しかも東京五輪で頂点に輝いた男子ボクサーを紹介しましょう。


【桜井孝雄】

 これまた白黒のハイライト映像ですが、現在のボクシングでも充分に通用してしまうのではないでしょうか?
 理想的なサウスポーといっていいでしょう。

 そんな桜井孝雄は典型的なB2タイプです。
 軽やかなフットワーク、真っ直ぐ伸びる切れ味たっぷりのジャブ、バックステップからの左ボディ、右チェックフックから相手が下がるところを狙っての左ストレート。
 嗚呼、これぞボクシング!!

 2021年現在におけるB2サウスポーのハイエンドはクロフォードやロマチェンコなどが挙げられるわけですが、そもそもB2サウスポーって人種や国を問わず多い印象です。

 足底-股関節-首付け根を軸ポイントとして姿勢をつくり、
体前面を主動面とするB2のアクションは、サウスポーに求められる技術と親和性が高いとみられます。
 例えばフットワークは弧を描く傾向が強く、相手(オーソドックス)の外側へ回り込みやすい。右フックはBタイプらしくワイドに、そして脊椎横突起を軸として体幹を回すためB1以上にロングで繰り出すことが出来、踏み込む相手をいなしたり、距離を保ちながらカウンターを決めるのに最適です。

 相手にとっては、逃げ水を追わされているような気分でしょう。で、不用意に近づくと左ストレートが待っている。

 あれ?B2サウスポー最強じゃね?と思うかもしれません。
 最強になれるかは、その選手が如何に自分を理解し、いかに環境に適応できるかにかかっています。
 B2サウスポーは、自分の才覚に気づく条件が少し緩いだけなのかもしれません。これはリングの上で展開される人間の心理の傾向とも、それなりに関係がありそうです。

 こんにちは、ミラノです。

 突然ですが、大昔のボクシングに興味がある方ってどれくらいいらっしゃるでしょうか。

 僕はそういうの大好きです。今とは違った趣があります。背景を知ると、たとい白黒でカックカクだとしても映像の迫力が半端なくなります。

 ですがこのブログ、あくまで4スタンス理論から見たボクシングを紹介するコンセプトなんですよね。

 ということで今回は1950年代に活躍した、とある古のジャパニーズファイターを分析してみましょう。


【白井義男】


 言わずと知れた日本人最初のプロボクシング世界王者ですね。身長が高い方が白井さんです。

 彼はおそらくB2タイプです。
 股関節の高さがほとんど常に固定されていて、これは典型的なBタイプの特徴であると思います。

 体型について、肩に注目していただきたいのですが、だらんとした形状ですよね。これはクロスタイプに多く見られる特徴です。ちなみにパラレルタイプだと怒り肩になりやすいです。
 クロスタイプは身体前面を主動面とするため、胸側の筋肉に引っ張られてこのような形になるんじゃないかなぁ、などと推測しています。

 ボクシングに注目しましょう。
 まずはディフェンス。ガードは低いですが頭がよく動いていて的を絞りにくいですね。
 ダッキングにおいては、右拳を首元に添えて軸を安定させつつ、右股関節から左肩にかけて体幹を収縮させることで素早い動作を実現させています。右拳はパリングに用いることも出来ます。

 ジャブがたいへんよく伸びますが、この時も蹴り出すときに右拳は首元に添えられ、軸から股関節が逸脱することによって発生するバランスの崩壊を防いでいます。

 パンチのほとんどが強打です。しっかり腰が入っていて重みを感じますね。
 2度目のダウンを奪ったコンビネーション(7:05~)が参考になると思いますが、左アッパーを当てることによって相手の頭が流れる方向を予測し、回り込んで自分の右アッパーが最も打ちやすい方向へ相手の頭がおかれるように調節しているのが分かります。
 自分の「打点」を熟知していますね。今でもこの技術を使うB2の選手、たまに見ます。代表例はロマチェンコです。
 クロスタイプは脊椎横突起が体幹を動かす基点となるため、動作するたびに横滑りが起きます。左右を強振する場合、適宜ポジションを変えて調節する必要があるのです。

 かつて世界の頂点に輝いた技術、今でも充分通用しちゃうんですねえ。昔は昔?ノンノンノンノン。
 4スタンス理論は今と昔のボクシングを繋ぐ重要なファクターなのです。

 こんにちは、ミラノです。

 ウガス先生勝ちましたね~、それも文句なしに。
 サーマンも初回のダウンや10回にボディで下がったシーンがなければポイントで勝つことが出来たでしょうが、それが出来なかったのは4スタンス理論的にもある程度説明がつきそうです。


【サーマンがパッキャオに勝てなかった理由】
 A2タイプのサーマンは運動神経抜群で、パンチ力のあるアウトボクサーです。しかしA2タイプはそれゆえに序盤にペースをあっさり掌握しては少しずつ試合がダレて途中でコケるという試合展開に陥りがちです。

 特にサーマンはよく左右に動いて相手のプレスをかわそうとしますから、なおさら中盤以降にボディが効きやすいのですよね。また、左右に逃れる時も弧を描くというよりはカクカクした線を描くA2らしい傾向にあります。例えるならカービィのエアライドに登場したルインズスターみたいな感じです。伝わってください。


 当興行のアンダーに出場したマグサヨもA2ですが、下がり方がもったいないと指摘する方が結構いらっしゃいましたね。あれはむしろA2にありがちな動きなのです。そしてインサイドが苦手なので真っ直ぐ下がるのになかなか打ち返せない。
 だからこそA2は力強いジャブで跳ね返すか、メイウェザーのように半身の姿勢で巧みなボディワークを使っていなすかしなければならないわけです。
 サーマンはどちらの武器も充実していなかった。結果、スタミナはすっかり抜け落ちたけどパンチ力と一瞬のキレが健在のパッキャオには明確に敗北したのです。

 しかし、今回の相手はサーマンでもスペンスでもなく、ウガスでした。
 予想記事でも書きましたが、ウガスはB2タイプです。マルケスと同じです。
 パッキャオと言えばバレラ、モラレス、マルケスという錚々たるメキシカンと戦い抜いた実績がありますが、このうちマルケスには最後まで完勝することが出来ませんでした。バレラがB1、モラレスがA1であるのに対して、マルケスがB2だったからというのは大いにあると思います。

 バレラのレバーやモラレスの右ストレートより、ワンテンポ置いて伸びてくるマルケスの左フック、右ストレート、右ボラードは何倍もパッキャオにとって厄介でした。

 そして先日、パッキャオは同じB2であるウガスに敗れたのです。

 もちろんパッキャオは他のB2ファイターとも多く手を合わせ、そして勝利してきました。今回はそれを覆す要素がいくつも重なりました。

【ジャブ、体格、パッキャオのスタミナ不足、そしてB2であること】
 はい、上記のとおりです。ウガスが序盤でジャブの差し合いをある程度制した時点で、パッキャオはおびただしい発汗と共にペースを失いました。ジャブにジャブを被せるというパッキャオお得意の職人芸がこれほどまでに通用しなかったのは、ウガスが体格で大きく上回り、且つリードブローの伸びる選手であり、そしてB2タイプであるからです。

 ジャブで優位に立つことが多いのはクロスタイプ(A1/B2)だと僕は考えています。もちろんパラレルタイプ(A2/B1)でも巧みにジャブを使いこなす選手はいますが、クロスタイプ相手になると結構苦しくなりがちです。




 ドネア(A2)はナルバエス(A1)を倒せませんでしたが、前手の差し合いで明確に上回れなかったのも大きいと思います。リゴさん(A2)からは4ラウンドに左フックカウンターを決め、10ラウンドに左フックでダウンを奪えましたが、ナルバエス戦ではまともなクリーンヒットすら許してもらえませんでした。同じサウスポーでディフェンシブでもこれだけ差が出るので、タイプの違いは結構試合の流れに影響すると思います。

 で、ウガスはB2。パッキャオもA1なのでお互いリードブローが試合のカギを握る傾向にありますが、体格というアドバンテージとジャブにジャブで返す巧みな技術があったからこそ、ウガスは自分の思うように試合を組み立てることが出来たといえるでしょう。

 しかし、先日の予想記事ではジャブについて完全にスルーしてしまいました。この点でもパッキャオが上回るんじゃないかと思って言及しなかったので、これはもう完全に僕の予想が外れましたね。
 よく考えればパッキャオにとって不利なポイントが散見されるのに。体格差を的確に考慮したイメージは難しいものです。

 右ボラードはやっぱりよく当たりましたね。このパンチはパッキャオも大概狙われるのに慣れてるでしょうから、しっかりガードを上げて対処をしていましたが、体が伸びたところへ受け止めるので高確率で吹っ飛ばされました。マルケス戦とまんま同じパターン。

(9:58あたりから)

 ウガスのそれは猫背の傾向が強く、力が分散しがちなので効かせるような質のパンチではないですが、外から飛んでくるパンチの恐ろしさをよく知っているパッキャオにとって決して無視できるものではなかったはずです。
 パッキャオはフットワークがディフェンスなので、どっしり構えて巧みなボディワークを駆使してひらひら避けるのは身上ではありません。元から抱えていた問題を、彼は最後まで克服することが出来なかったといえるでしょう。


 得意の右ボディでパッキャオに踏み込みを躊躇させたのも大きいですね。これに関してはパッキャオがスタミナを気にしていたともとれますが。

【ウガス先生を称賛したい理由】
 この試合はきっとウガスの評価がうなぎ登りになるようなものではないでしょう。パッキャオは大概落ち目であり、代役だったこともありウガスは注目度の低い選手です。試合も普通に行われ、普通に終わり、普通に勝っただけです。

 でもね、なんという巡り合わせでしょうか。あれだけ期待されていたスペンスがまさか目の怪我で撤退を余儀なくされ、たまたま同じ興行での出場を予定してたところへお鉢が回り、短い準備期間でも自分の戦い方を確立し、そして勝利したのです。

 御年35、ここまで来るのに亡命、連敗という挫折、ポーター戦での議論を呼ぶ惜敗…あらゆる試練を乗り越え、ふと神様が落としていった運をガッチリつかんでみせた。

 これほどに痛快な人生もなかなかないでしょう。

 だから、僕はウガスを先生と呼ぶことにしたのです。

 試合が面白いとは言いません。でも僕は当分の間彼を推すことになりました。
 スペンスファンの皆さん、対戦よろしくお願いします。クロフォードファンの皆さん、対戦よろしくお願いします。
 終わりです。

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